唐風呂大根&船石芋(旧足尾町在来種)

かつては隆盛を極めた足尾銅山。
今や忘却の彼方に追いやられたその地域に、絶滅寸前の在来種があります。

唐風呂大根、そして船石芋。

いずれも決して農業に向いているとは言えないその山間部で、足尾銅山で働く人々の胃袋を支えてきた在来種です。ほぼ現地で消費されていたため、他の地域には出荷されず、広範囲に知れ渡ることがありませんでした。

希少な赤色の唐風呂大根

唐風呂大根は、首のまわりが赤色の鮮やかな大根で、その歴史は古く、石器時代から存在していたとの説もあるほど。かつては縄文人が住んでいた唐風呂地区(旧足尾町)でしか育てられない希少な大根で、不思議なことに他の地域で育てると、この見事な赤い色が消えてしまいます。現在、一握りの種が残されているだけの絶滅寸前の在来種です。

俵型のじゃがいも、船石芋

船石芋は、足尾銅山採鉱の主要地域である備前楯山(1,272m)と、西北西に位置する庚申山(1,901m)との鞍部に位置する船石峠(1,045m)で作られていた細長い俵型のじゃがいもです。足尾銅山周辺は精錬所が出す亜硫酸ガスで作物が育たない状況だったため、鉱山労働者の貴重な食料となったことは間違いありません。
船石峠が最も栄えたのは、大正7年の頃で、47戸が農業を営みながら生活をしていましたが、銅山の衰退とともに昭和29年には峠の住民が途絶えました。その種芋は一部の足尾住民の手に渡り、自給用に細々と作られていましたが、銅山の閉山と住民の高齢化により姿を消し始め、この春、最後の作り手とみられる地元の猟師さんから種芋を手渡されました。

足尾の二つの在来種との邂逅

この足尾の壮大な歴史とドラマ詰め込まれた二つの在来種が、足尾銅山の閉山(1,973年)から40数年の時を経て絶滅寸前となっていました。今、思い返すと本当に不思議なご縁の連続でしたが、双方の種が共鳴し合ったのでしょうか?この春、劇的な邂逅を果たしました。知らない人からみれば、ただの大根とじゃがいもですが、これらの在来種と出会ってしまった自分としては、やはりどうしても見過ごすことが出来ません。足尾の先人達の数々の歴史とドラマが詰まったかけがえのない在来種です。この二つの在来種と出会い、自分に何が出来るか自問自答を繰り返しましたが、今後、地元をはじめ、他地域の方々のご協力を仰ぎ、自分の出来る範囲で繋げて行けたらと思います。

旧足尾町(現日光市)は、かつて縄文人が住んでいた地域。そして、そこには猿や鹿や猪、カモシカや熊などの野生動物が生息しています。それとは対照的な足尾銅山の廃坑跡や鉱山労働者の住んでいた長屋跡、亜硫酸ガスの影響で植物が枯れ、岩肌がむき出してしまった山々。まるでジブリ映画「もののけ姫」のエッセンスが濃厚に散りばめられたような、我々の未来へ向けて何らかのメッセージが秘められているような場所です。そして、その場所で残された在来種を作り続けることの意義。

この春、唐風呂地区のK氏のご協力の下、船石芋の植え付けを行いました。この週末、試し掘りをしましたが、見事な俵型のじゃがいもに育ってくれました。再来週は、この船石芋の収穫とともに唐風呂大根の播種を行う予定です。

みんなで考え、みんなで実践、シェアする農業@足尾版
今後、この種を楽しく未来へ繋げて行きたい方は、是非ともご連絡下さい。

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唐風呂大根&船石芋(旧足尾町在来種)” に対して4件のコメントがあります。

  1. はらぐ より:

    素敵なご縁ですね!2つのタネをぜひ守ってください♬
    私も唐風呂大根、船石芋食べてみたいです(^^)

    1. nohara より:

      原國様 ありがとうございます。唐風呂大根に船石芋、食卓にお届け出来るように頑張ります。どうぞよろしくお願い致します。

  2. 吉田絵美子 より:

    未来のこどもたちのために☆
    ぜひとも参加させてくださいっ!!!

    1. nohara より:

      吉田様 いつもありがとうございます。是非ともご参加下さい。後ほど、詳細送らせて頂きますね。

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