平日の昼下がり。

幻のさつまいも「花魁(おいらん)」の生産者、千葉県の明妻一之(83歳)さんにお話しを伺いに行ってきました。

明妻さんは、彼の幼少期から両親が栽培していた花魁に惚れ込み、60年以上種を繋いできました。現在、千葉県内での作り手はほぼ皆無で、唯一の生産者と思われます。(他の産地は不明)

年々、さつま芋の品種改良が進み、より甘さを追求したお芋が登場していく中で、花魁を栽培する生産者が減少し続け、気が付けば明妻さん一人になっていました。

「誰も見向きもしなくなった、このさつま芋を、何故60年間も栽培してきたのですか?」との問いに、「ただ、花魁を食べるのが楽しみだから」との返答。
親の代から栽培されてきて、少なくとも80年以上はその土地で繋がれてきた花魁。在来種と言っても過言でないこの貴重なお芋を、下手な義務感や使命感で栽培続けてきたのではなく、心から愛し、自分が食べ続けるために繋いできたことに大いに感銘を受けるとともに、種を繋ぐことの本来の意味を改めて考えさせられました。
2020年の春、この花魁の種芋をもらい受け、シェアする農業、たねまきびと@益子のメンバーと一緒に栽培を始めました。今回、自分達の栽培したお芋を明妻さんに見てもらいました。ビニールマルチもせずに無施肥で栽培してることに驚かれましたが、身が詰まった花魁独特の膨らみ具合にお褒めの言葉を頂きました。栽培方法についても、いくつかご指南頂き、来シーズンはさらに良い状態で栽培出来そうな予感がします。

「好きこそ物の上手なれ!」

明妻さんの花魁に対する姿勢は、まさにこの一言に尽きると思います。
彼はかつて周囲の人から、この品種に対する商標登録を勧められたこともあったといいます。しかし、独占するつもりはさらさらなく、作りたい方には誰にでも種芋を渡していいとおっしゃってました。花魁を本当に愛しているからこそ、心の底からこういった言葉が出てくるのだと思います。
今回は本当にお会い出来て良かったと思います。花魁を繋いできた彼の意志を見習い、我々たねまきびと@益子も、この品種を愛するたくさんの人々の手に広げられるようにしていくことが、本当の意味での種を繋ぐことだと信じてやみません。
明妻さん、この度は貴重な時間を頂きありがとございました。
またお互いに芋自慢し合いながら、お話し出来ることを楽しみにしてます。